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 この前書いたラップのフォーム解説が思いのほか好評だったので、次はベケレをやってみようと思います。
 
 このHPをご覧の皆さんは、ベケレが非常に不調にあって、またフォームがおかしいことにお気づきだと思いますが、今回はそれを僕が様々な角度から分析し、可視化してみたいと思います。


まずは脚の振り出し時における比較です。
好調時(2008年北京五輪) 
無題
現在
無題45
 上記二つの写真中の段階の中で大きく異なっているのは、まず「足を振り出した際の太ももの角度」だということが分かります。これはつまり何を意味するかといえば、好調時に比べ脚が前に出せていないということになります。単純に考えて、ストライドの減少を招く可能性も考えられます。

 これはおそらくベケレが左のアキレス腱を故障したことに起因する可能性があるように思います。つまり、右足を振り上げるためには、左足のキックが不可欠です。しかし、ベケレは2年もの間そこを故障していたので、無意識にかばって走っているため、キックが不十分になっている、という可能性もあるでしょう

 次に「蹴り上げの角度」です。ほぼ同段階において、現在蹴り上げの角度が大きいということは、それだけ蹴り上げの際の引きつけ速度が遅くなっていることを意味します。映像を見てみても、明らかに引き付けの速度、また蹴り上げの強さの減少が見られますが、この写真比較でもその傾向を見ることができます。

 また、写真では差異が確認できない、「下肢の振り出しの差」ですが、動画で見ると、明らかに好調時に比べ、現在は振り出している時間が短くなっています。これも、やはり太ももの振り出しが弱くなっている結果引き起こされたものでしょう。
 
また、そもそも振り出し自体、弱くなっているように見えます。


続きまして・・・
好調時(2008年北京五輪) 
無題47
現在 
無題46
 不調時と好調時で差異がみられそうに感じていた、股関節の可動域や前傾の角度には差異がみられませんでした。正直ちょっと意外でしたね。

 最も差異がみられたのは、蹴りだし時の上体と太ももの角度でした。他の角度に差異がないことをふまえ考えると、ベケレは現在、好調時に比べ、蹴りだす力=キック力が弱くなっているという可能性が考えられるのではないでしょうか。

 また、足をあげる角度に差異がなく、また上で検証した振り出し時の太ももと上体の角度が、好調時に比べ大きくなっていることを考慮すると、単純に考えて、脚を蹴りだす動作に入るのが早くなっているということになるでしょうか。これはつまりピッチの増加の可能性を示唆しています。
 
つまり上の考察と合わせて、今のベケレはストライドが減少し、ピッチが増加している・・・可能性があります。もっとも、ピッチとストライドは基本的に反比例するので、当たり前のことではありますが。しかし、一流選手のピッチ数は男女ともほぼ一定であり、差異はストライドの長さだけという研究結果がありますから、もし僕の考察が正しければ、これはべケレにとって大きな喪失といえるでしょう。

 しかし、ピッチ数の増加に関しては、動画で確認しなければならない事項であり、未だ確認できていないので、保留ということで。(間違ってたらゴメンナサイw) 

続いて、腕振りに関して
好調時(2008年北京五輪)  
無題
現在 
2無題
 ベケレのフォームで最も分かりやすい変化というのはおそらく腕振りでしょう。御覧の通り一目瞭然、数字にするとかなり変わっているということが分かります。また、肩に関しても、少し現在のほうが下がっているように見えます。しかしだからなんだと言われると、ここから得られる情報は非常に少ないので、何とも言えませんw

 しかし書きながら思ったのは、ベケレは左アキレスけんを故障していたということなので、2年間も故障しっぱなしでは、かばって走ってしまったりで、おそらく変な癖も付いてしまうことでしょう。その結果このような変化がもたらせられた可能性ありです。また、ベケレも御年30になります。流石に昔のような非常に筋力を必要とする走り方ができなくなってしまっている、というのもあると思います。
 
 今回のこの考察はあくまである一面から見たものであり、フォームからだけで全てを判断するのは早計、また不調の原因というものは、フォームだけでなく様々な多面的な考察が必要である・・・ということを一応断わっておきます。


また考察が進み次第、追記いたします。


しかしながら、動画で確認すると、 好調時と現在の差は歴然であります。

2008年 北京五輪10000m

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2012年 ロンドン五輪10000m